ITモダナイゼーションを成功させる4つの重要要因
IT改革が求められる現状
世界160か国以上の航空会社、ホスピタリティ業界、旅行代理店のニーズに対応するため変革を加速する必要があったSabre社は、DXC Technologyと提携し、システムの運用保守改善と効率的なクラウドへのワークロード移行を実現しました。その後の契約で提供サービスを拡大し、安全性とレジリエンスを備えた効率的なITアウトソーシングとインフラストラクチャサービスを通じて、同社のグローバル予約管理プラットフォームをサポートするとともに、重要なセキュリティ、クラウド、アプリケーション、アナリティクス、エンジニアリング機能もDXCが提供する予定です。
ビジネスニーズが急速に変化するなか、企業はITの優先順位を見直しており、データセンターやマルチクラウドからリモート作業環境や高度な分析に至るまで、エンタープライズテクノロジースタック(企業のITを構成する様々なテクノロジーとサービスの組み合わせ)全体での簡素化と高速化が新たな焦点となっています。即時のコスト削減、運用のアジリティ、レジリエンス、セキュリティに対する要求が変革を後押ししています。
モダナイゼーションは、IT組織の自己改革、およびビジネスの急速な拡大と市場投入までの時間短縮を実現する手段です。それは、クラウドのスピードを活用した新しい働き方と、アジリティとイノベーションを重視する新しい考え方に対応します。最先端のテクノロジープラットフォームはデータのもつ可能性を引き出し、ユーザーや運用に関するより詳細なインサイトの獲得を支援します(図 1)。
図 1. モダナイゼーションにより、IT組織は増え続けるビジネスの必須要件に対応することが可能に
企業はデジタルサービス、アジャイルプロセス、信頼性を備えたビジネスインテリジェンスを活用することで、市場の変化に迅速に適応し、新しいビジネスモデルに専念できます。本書では、既存IT環境の簡素化と最適化からアプリケーションと運用の変革、ハイブリッドとマルチクラウド環境の運用に至るまで、モダナイゼーションを成功させる重要要因について説明します。
ITモダナイゼーションを成功させる4つの重要要因
ほとんどの組織にとってITモダナイゼーションは、従来型のプラットフォームとプロセスから最新のIT資産と新しい運用モデルへの移行を意味し、その過程には、IT戦略とビジネス戦略の整合化、ITの簡素化と最適化、アプリケーションとデータのモダナイゼーション、大規模ハイブリッド環境における安全性の高い運用、という4つの成功要因があります。
各企業組織でのITモダナイゼーションの取り組みはそれぞれの状況に応じた順序で行われますが、移行過程の一部分を重点的に取り組むことも、4つすべてを同時に取り組むことも可能です。

モダナイゼーションは、IT組織の自己改革、およびビジネスの急速な拡大と市場投入までの時間短縮を実現する手段です。
1. IT戦略とビジネス戦略の整合化
モダナイゼーションへの最初の重要なステップは、組織におけるIT戦略とビジネス戦略の整合化です。どのような改善施策がビジネス全体の戦略に適合するかを判断し、そのビジョンと一致する機会を見つけ出して、詳細な計画を策定します。
さらに、この整合化にはコスト削減、柔軟性の向上、ビジネスの加速など、求められるビジネス成果の達成に必要な投資について、経営陣と密接なコミュニケーションを行い、信頼関係を築くことが必要です。整合化と計画の策定を通じて、ROIとイノベーションへの投資強化に関する理解がはるかに深まります。ただし、計画は変更不可ではありません。ビジネス部門とIT部門は定期的に計画を再評価する必要があり、特にビジネスの状況が不確かな場合はなおさらです。継続的なフィードバックと評価基準の設定により、モダナイゼーションの取り組みは変化を繰り返します。
2. ITの簡素化と最適化
過度に複雑なシステムは、組織の戦略的課題に対する取り組みの妨げとなります。老朽化したIT資産は、コスト上昇と品質低下を招くとともに、変革のスピードを遅らせる可能性があります。コストの最適化には、リーンプロセスと自動化、ワークロード配置の改善、未使用または使用率の低いシステム、サービス、データの排除など、テクノロジーの刷新によって対応できます。
また、自動ワークロード管理ツールを活用してIT環境を継続的に最適化し、ソフトウェア定義ネットワークを実装することもできます。ITのモダナイゼーションによって解放されるリソースと予算を即座にイノベーションに転用し、新しいサービスとクラウドへの移行の推進が可能になります。
ランレートで最大30%の即時のコスト削減を目指して、ITのアウトソーシングを検討することもできます。さらに、アウトソーシングによって組織はテクノロジーの刷新やクラウドへの移行に伴うリスクを軽減し、自動化の拡充、サービスレベルの予測可能性の向上、セキュリティの強化など、大幅な効率化を実現できます。

自動運転を加速
自動運転車のリーダーを目指すBMW社は、最先端のIT資産を必要としていました。同社はDXCと提携して、High Performance D3 Platform を設計してインフラストラクチャ、アナリティクス、およびエンジニアリングに最適な最新の環境を構築しました。このシステムには、BMW社の試験車両からテストデータを収集、保存、管理、検索、分析およびシミュレートする包括的なサービスが含まれています。BMW社は、試験車両のセンサーからデータを取得し、そのデータをAIトレーニングに利用できるようにしています。この作業は、保存、処理、AIトレーニングに利用する単一のクラウドベースのプラットフォームで、わずか数秒で行われており、コストも複雑性も軽減されています。
3. アプリケーションとデータのモダナイゼーション
多くの企業が、従来のクラウド環境へのワークロードの配置戦略の策定と実行に苦労しています。多くの場合、技術面と経済面の両方が障壁となっており、各アプリケーションのビジネスケースの妥当性を個別に検証し、アプリケーションを最新化または変革してから廃止することで、部分的に克服できます。このアプリケーション合理化プロセスには、ワークロードの配置が関係します。原則として、アプリケーションとデータを配置する場所と、それらを利用するユーザーに最適なサービスを提供する方法から、配置を決定します。
ビジネスの優先順位が確定した後に、アプリケーションの評価と合理化(コスト削減が可能)、アプリケーションの最新化または変革(スピード、アジリティ、さらなるコスト削減の実現)、あるいはクラウドベースの運用モデルの実装、を実施できます。このとき、セキュリティ、パフォーマンス、および財務上の要件を考慮する必要があります。
4. 大規模ハイブリッド環境における安全性の高い運用
ほとんどの大企業では、近い将来ハイブリッドのIT資産を管理する必要に迫られることになります。このためこうした企業では、ビジネスを市場の変化に対応させ、クラウドリソースの成長に伴ってはるかに広範なエコシステムのセキュリティを確保し続ける運用モデルが必要となります。最新のハイブリッドIT環境により、企業はイノベーションの継続、オンデマンドでのIT資産のプロビジョニング、利用の弾力性を実現しながら、従来のIT固定資産を解消することができます。
このタイプのハイブリッドアーキテクチャーを管理するためには、クラウドシステムの規模を拡大しながら既存のIT環境と統合する必要があり、オンプレミス、データセンターまたはクラウド、エッジにあるリソースと連携して機能させる新たな戦略を策定する必要があります。
新しい運用モデルにより、統合型運用、大規模でインテリジェントな自動化が確保されるとともに、分析、AI、リーンプロセスを活用する機能も確保され、より優れたインサイト、スピード、効率性が実現します。
計画から実行へ

世界で最も有名なアニメーションスタジオの1つであるDreamWorksAnimation社では、所属アーティスト、アニメーター、技術者が毎年何百時間相当もの映画、テレビ番組、テーマパークのコンテンツを制作しています。DXCと協力して、同社は仮想化とマイクロサービス、サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)、セキュリティ設計、侵入テストを実装してLinuxベースのデータセンターを進化させ、クラウド内のよりアジャイルな最新の運用モデルに移行する計画を進めました。DXCは、UI/UXデザインを含む最新のアプリケーションを開発し、包括的なメディア制作プラットフォームを迅速に実装するとともに、リモートワーカー向けに高性能の仮想ワークステーションを導入しました。同スタジオは外出禁止令のさなかでも業務を続けることができました。
CIO(最高情報責任者)は、最新のIT資産について妥当なビジネスケースを描く必要があります。これにはまず、ITモダナイゼーションの取り組みをビジネス戦略と整合させ、新たに資金を投入できるITサービスを選択し、アプリケーションとデータを統合して分析プログラムを改善する必要があります。計画の成功には、人、プロセス、テクノロジーを網羅する必要があり、以下の戦略をご検討ください。
- 高速化とインサイトの抽出を実現: 最新のIT環境により、企業は高速化とビジネスに必要なデータの取得が可能になります。データは、新しいビジネスの進め方をサポートする戦略的資産です。さらに、最新のプラットフォームにより、データマイニング、機械学習、予測分析などの詳細な分析が可能になり、包括的でプロアクティブな管理と優れたビジネスインテリジェンスが実現します。
- NoOpsを目指した設計: ビジネスの要件と緊密に整合したアジャイルな運用とコストの実現に重要であるインテリジェントな自動化は、リアルタイムデータと機械学習を利用して、アプリケーションサービス、開発、ITデリバリ、セキュリティなどの効率性を高めます。最終的にIT部門は、自動化と自己修復システムを活用する、さらに進化した運用モデルであるNoOpsを目指して設計する必要があります。
- 企業文化の変革を計画: まず、IT部門のコアチームから変革を開始し、外部に広げて規模を拡大します。クラウドへの移行とともに従来型アプローチを進化させながら、IT部門は、DevSecOpsやサイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)などの新しい手法を導入する必要があります。SREは自動化をテクノロジースタック全体に適用する手法であり、ソフトウェアエンジニアは自動化、自己修復、信頼性の向上へ注力します。このアプローチでは、開発担当者と運用担当者の合同チームを構成して新しいスキルを習得させ、さまざまなスキルの共有を行う必要があります。サイロ化を解消することで運用コストを削減すると同時に、アプリケーションの信頼性と稼働時間の向上が可能になります。
- 単独で行わない: ITモダナイゼーションはやりがいのある挑戦ですが、お客様だけで行うのではなく、統合に関する専門知識とクラウドの管理能力を有し、大規模な変革を成功させた確かな実績を持つサプライヤーの協力を得てください。明確な視点と実績ある手法を有する極めて優秀なパートナーと、特定のテクノロジーに依存しないソリューションを提供する堅牢なパートナーエコシステムが必要です。
DXCの提供するサポート
世界をリードするITサービス企業であるDXC Technologyは、大企業の複雑な変革を支えるパートナーとして認められており、お客様がITモダナイゼーションのコストとリスクを削減しながら、あらゆる段階でアジリティを高めることができるようご支援します。
DXCのITモダナイゼーションソリューションは、テクノロジーサービス、ツール、機能を含むDXC Bionix™などの包括的ソリューション、インテリジェントな自動化と機械学習におけるデータ駆動型アプローチ、および200以上のパートナーからなるエコシステムなどによって支えられています。
セキュアなエコシステムは新しい運用モデルの成功に不可欠であり、セキュリティと個人情報保護のためにすべてのデータが暗号化されます。パスワードは段階的に廃止され、IDとロールが検証されます。データトラフィックは、クラウドからエッジに至るまで、コンプライアンスと監査対応のために監視されます。攻撃の厳しい環境におけるエコシステムの保護には、ゼロトラストのセキュリティポリシーが重要です。
詳細情報(英語): www.dxc.technology/ITmodernization